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有識者セミナーレポート
専門家と考える持続可能な新上五島町の交通まちづくり
                          ~モビリティデータを活用した交通施策立案事例の共有、参加者との意見交換~
セミナー概要
ワークショップの様子1

新上五島町における交通ビッグデータ利活用及びオペレーション人材育成事業の一環として、全国のモビリティ・データ利活用事例から交通施策立案プロセスを学ぶことを目的に、有識者セミナーを開催しました。

ワークショップの様子2 ワークショップの様子3

前半は、早稲田大学教授の佐々木邦明氏が登壇し「モビリティ・データを活用した交通課題の把握と解決策の検討」について講演しました。佐々木教授は、公共交通が免許を持てない人の移動や社会性の維持、健康状態の悪化防止などに不可欠であると説明し、公共交通を使いやすくするためには、“人口情報や地域特性情報、交通サービス利用情報といったデータを活用し「必要な時に必要な場所に行く」という需要を明確にすることの重要性”について語っていただきました。 さらに、データは議論を感覚や感情だけでなく進めるツールであり、思い込み緩和や想像力の不足を補う役割を果たすと説明されました。新上五島町においても、路線バスとSmartGOTO(デマンド交通)を最適な組み合わせによって、需要に対して、ベストな供給バランスを取ることで移動の効率を上げらる可能性についてもお話いただきました。

ワークショップの様子4 ワークショップの様子5

後半では、株式会社MaaS Tech Japanの清水宏之氏に登壇いただき「交通まちづくり」に向けた情報共有とディスカッションを行いました。清水氏は、人口減少や交通事業の衰退、ドライバー不足という地域の課題に言及しました。 また、同社のノーコード・ローコードツールを事例として、交通データと人流データの統合や可視化し、政策評価を行う重要性を説明いただきました。人口の少ない地域では、従来の公共交通だけでなく、コミュニティバスや送迎サービスといった無償輸送手段との連携も視野に入れるべきだと示唆されました。

セミナーの最後には、交通弱者対策、観光振興、学生の足の確保といったテーマで参加者との意見交換を行いました。本セミナーでは、地元の交通事業者など、36名 の方にご参加いただき、大きな関心の中で、データ分析活用の重要性を協議し、今後の町の交通の発展を期待させる学びの場となりました。

セミナー資料

セミナー資料

セミナーの様子

ワークショップの様子1
ワークショップの様子2
ワークショップの様子3
ワークショップの様子4
ワークショップの様子5
ワークショップの様子6

講演者と参加者の意見交換・質疑応答内容

Q

公共交通とイベントの開始時刻を合わせる?
清水宏之 氏
清水宏之 氏
イベント開始時刻をバスの到着時間に合わせるだけで公共交通の利用が増える可能性があります。今回のセミナー開始時刻は9時30分でしたが、もし最寄りのバス停に9時35分にバスが到着する場合、参加者はバスを使えません。開始時刻を9時40分に変更すれば、バス利用者が参加できるようになります。このような調整は交通事業者ではなくイベント事業者や地域側の取り組みでも可能です。

Q

公共交通の便や時間帯はどう定義するのが良いの?
佐々木邦明 氏
佐々木邦明 氏
便数を増やせば確かに便利になりますが、必ずしも多ければよいわけではありません。山梨県では、週30便を週3回に減らし、生活ニーズに合わせたダイヤを丁寧に設計した結果、利用者が3倍に増えた事例があります。利用者へのヒアリングで「買い物は週何回か」「午前中に帰宅したい」などの要望を把握し、生活全体を設計することが重要です。

Q

公共交通を持続可能にするにはどうすれば良いの?
佐々木邦明 氏
佐々木邦明 氏
すべての移動を公共交通に変える必要はなく、100回の移動のうちバス利用を3回から4回に増やすだけで利用率は30%向上します。小さな行動変容を積み重ねることが重要です。また、地域のイベント案内に「このバスで来られます」と明記するなど、利用機会を増やす工夫が有効であり、経済循環を生む仕組みづくりが公共交通の持続可能性には不可欠です。

新上五島町モビリティ会議 2025